東京地検特捜部が立件を目指す刑事事件について、鳩山由紀夫首相が不起訴を「望みたい」と言ってしまったことは、首相の本音がやはり「反検察」であることを浮き彫りにした。首相が不起訴を望んだ石川知裕容疑者の事件では23日に、民主党の小沢一郎幹事長の聴取が予定されているが、捜査の行方を左右し得る「行政の長」として、首相の発言は検察への圧力や牽制(けんせい)とも受け取れるだけに、問題となりそうだ。
小沢氏を支持する議員グループ「一新会」は21日、特捜部の取り調べを受けた経験のある新党大地代表の鈴木宗男衆院議員を講師に呼び、「検察がリーク(漏洩)する情報は裏(裏付け)が取れない。マスコミは反権力というが(リーク)を信用して書いている」との主張に耳を傾けた。
また、輿石東参院議員会長は同日の記者会見で、党内に設置することが決まっていた「捜査情報漏洩(ろうえい)問題対策チーム」について、予定通りに設置を目指す方針を強調した。この対策チームについては、捜査に対する圧力ではないかとの批判が高まっていたが、民主党としてはなお、検察の活動に目を光らせていく方針であることを表明したものだ。
こうした党内の「反検察」色のきっかけとなったのは、ほかならぬ鳩山首相自身だ。石川容疑者の逮捕翌日の16日、「(検察と)戦っていく」と宣言した小沢氏に対し、「どうぞ戦ってください」と応じた。
こうした発言が批判を浴びたため、首相は「検察に圧力をかけるつもりはない」などと軌道修正を図っていたはずだった。
しかし、本心は別だったようだ。20日に約45分間にわたって首相と面会した鈴木氏は、「外向きの話と首相の胸の内は別ものだ」と指摘していた。鈴木氏の“予言”は正しかった。
首相だけではない。他の与党議員たちの間でも、検に対する反発の声は消えていない。
問題は与党議員たちが、政府に影響を与え得る自らの立場を理解しているかどうかだ。とりわけ、行政の長である首相は、その重みを十分に意識すべきだし、法務省の一組織である検察庁の活動に対してもそうであるべきだ。
ましてや指揮権の問題もある。少なくとも、この日の首相発言からは、その自覚はうががえない。(船津寛)
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